庭づくりの重要な素材として使われる石。世界中の人々の心をとらえる伝統的な日本庭園の石組は、誰でも一度はご覧になったことがあるはずですが、草花や樹木といった植物素材に比べると少々ハードルが高く感じられるかもしれません。「難しく考えずに、まずは石を見て想像を広げてみましょう」と話す髙﨑康隆理事。自身の石との出会いから、インタビューが始まります。 |
![]() ► 髙﨑 康隆(たかさき やすたか) 高崎設計室代表取締役 石組師 京都造形芸術大学講師 京都で古庭園の調査・測量に従事。造園家 中島健氏に師事。伝統庭園とともに草花を取り込んだ庭園を手がけ、職人と設計者両方の仕事を体験する。著書・監修に「庭仕事の庭石テクニック」、「原色庭石大事典」(共に誠文堂新光社)など多数。JGN理事。 |
JGN事務局スタッフ(以下JGNで表記):
もう一か所くらい、ご紹介いただけませんか?
髙﨑:
たくさんあるんだけど、そこは音羽サロン(注)で直接説明したいな。う~ん、それじゃあ有名どころで桂離宮。複数の庭石を置く時は、石を組むと言います。この庭で私が好きなのは、二石組。なんとなく日本庭園の石は3つ以上の組み合わせのようなイメージがありませんか?
(注)当会事務所で行われるサロン。会ってみたい人に膝突き合わせて話を聞いちゃおうという、現代版寺子屋企画。いわゆる講義ではなく、講師と参加者の闊達な対話で進められます。
►音羽サロンのこれからの予定はこちら
JGN:
そう言われてみれば、写真集などで見る日本庭園は、奇数の組み合わせが多いような気がします。
髙﨑:
桂離宮の立石、横石の組み合わせのように二石組も伝統的な石組なんですよ。平安、室町時代の絵巻物にも二石の組み合わせがよく描かれています。
JGN:
偶数だと、組み合わせるバランスが難しそうです。
髙﨑:
植物を植える時もそうですよね。三角形に植えるなど、奇数の方が一般的に思えるけれど、そうでもないんです。そうそう、桂離宮には、こんな石もありますよ。普通は見せない石のアゴと呼ばれる部分や、割れた面を見せてます。隣は、石の上に石がのっかってますね。石組って難しそうとか、決まりがたくさんありそうで面倒とか思ってませんか?
JGN:
正直に言うと、髙﨑さんからお話を伺うまではとっつきにくいと思っていました。
髙﨑:
歴史的、伝統的に見れば、そんなことはない。ポップで自由なものです。自由の一方で抑制がきいていて、実に現代的で、カッコイイと思います。
髙﨑:
そういえば、今は公開されていない武家の庭を訪ねたときのことです。画家でいらっしゃる当主に、「庭をやる人は、もっともっと美学を知らなきゃいけない」と言われたのを覚えています。
JGN:
石や植物にとどまらず、知るべきということでしょうか?
髙﨑:
例えば絵画や版画彫刻の世界。写真もそうです。よく、「わかる、わからない」なんて口にしますけど、そこに宇宙を感じられるかどうかが基準かもしれないなあ。
髙﨑:
最後は、私が作庭を手がけた庭をみていただきましょうか。
JGN:
身近に見にいける場所はありますか?
髙﨑:
それなら、東京都世田谷区二子玉川にある帰真園にしましょう。回遊式の日本庭園ですが、誰もが庭を楽しめるようバリアフリーになっています。使用した石は、採石場に実際に足を運び、選び抜いたものです。
JGN:
水の流れもあるのですね。
髙﨑:
はい。多摩川の源流から海へ向けて流れる景色を感じてもらえますよ。ぜひ、ベンチに座ってのんびり過ごしてください。
JGN:
都内の庭に、これほどたくさんの石が組まれているとは思いませんでした。圧巻!
髙﨑:
そうですか。ここでは、石の上に石を載せてます。一度やってみたいと思っていたんですよ。この庭も年月を積み重ねてどのように変化するか楽しみです。庭は変化しますが、石は変わらない。だからこそ、庭の骨格となる素材として重要です。
JGN:
今回のお話で、石っておもしろい、カッコイイと実感しました。石の種類や石組みの詳しいお話は伺いませんでしたが、ぜひ次の音羽サロンで聞いてみたいです。
髙﨑:
はい、了解しました!
髙﨑さんのインタビューはいかがでしたか?夏には、実際に庭石についてお話を伺う音羽サロンを開催予定ですので、どうぞお楽しみに。ご案内はウェブサイトでいたします。
次回からは、東チベット標高4000mで自生する植物たちについて、長岡求さんに聞きます。