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【JGNイベント記念限定公開 2024年5月24日~6月19日15:00】
JGN NEWS LETTER 2019年初夏号 Vol.11(その2)
特集記事
庭石から広がる世界
高崎設計室有限会社代表取締役・石組師・京都造形芸術大学客員教授・JGN理事
髙﨑 康隆氏

JGNイベント記念限定公開 2024年5月24日~6月19日15:00
現地集合!JGNスペシャルイベント
『 巨石の庭を歩く ~天目山 栖雲寺~』
講師:JGN理事・石組師 髙﨑 康隆氏

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特集記事 庭石から広がる世界 高崎設計室有限会社代表取締役、石組師、京都造形芸術大学客員教授、JGN理事 髙﨑 康隆

高崎設計室有限会社代表取締役・石組師・京都造形芸術大学客員教授・JGN理事 髙﨑 康隆

特集記事 庭石から広がる世界 高崎設計室有限会社代表取締役、石組師、京都造形芸術大学客員教授、JGN理事 髙﨑 康隆

特集記事 庭石から広がる世界 高崎設計室有限会社代表取締役、石組師、京都造形芸術大学客員教授、JGN理事 髙﨑 康隆
► 髙﨑 康隆(たかさき やすたか)
1951年東京都渋谷区生まれ。中学生で庭の道を志す。東京農工大学林学科植物生態学専攻。京都大学研修員、伝統庭園の調査。中島健に師事し10年間職人仕事と設計業務。JICA派遣専門家(イエメン勤務)。(株)西洋環境開発。1989年高崎設計室設立。2010年日本造園学会賞・設計作品部門「田園調布の四季の庭」、2012年同賞技術部門「名勝楽山園環境整備事業」。2013年「帰真園」作庭。著書に『造園がわかる本』(共著)、『庭仕事の庭石テクニック』(監修)他多数。

 庭園で出会った石の存在感に圧倒されたり、石組の表現に惹きつけられたり、という経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。一方で、難解な世界だと感じている方もいらっしゃるかもしれません。今回は、石組師として作庭や古庭園の調査・復元に携わる髙﨑康隆さんに、奥深い石の世界について語っていただきます。庭石をより身近に感じていただき、これまでとは異なる視点で眺めたり、庭に取り入れていただく機会になればと思います。(事務局)

自然を内包する石/フラクタル性

 自然石に台を付けて、室内で鑑賞する趣味を「水石」と呼びます。水石鑑賞の醍醐味は、一個の石から大きな自然を感じ取ることにあります。手のひらサイズのものから両手で抱えることの出来るものまで、およそ一人で持てるほどの重さの石に山や瀧や台地を連想してそこに一つの世界が浮かび上がります 1 。ひと鉢の小さな木から大樹を連想させる盆栽と共通する自然体験です。
 

特集記事 庭石から広がる世界 高崎設計室有限会社代表取締役、石組師、京都造形芸術大学客員教授、JGN理事 髙﨑 康隆 高さ数センチの小さな水石
1 高さ数センチの小さな水石

この空間体験が古庭園の主題となっている場合もあり、一石で宇宙を表わす「須弥山石」と呼ばれている石が金閣寺(京都・鹿苑寺)庭園や醍醐寺三宝院庭園に見られます 2 。なぜこれらの石がひとつの世界や宇宙までを連想させるかといえば・・・

特集記事 庭石から広がる世界 高崎設計室有限会社代表取締役、石組師、京都造形芸術大学客員教授、JGN理事 髙﨑 康隆 三宝院に見られる須弥山石の「藤戸石」
2 三宝院に見られる須弥山石の「藤戸石」
JGN NEWS LETTER 2019年初夏号 Vol.11

►JGN NEWS LETTER 2019年初夏号 Vol.11(その1)
Comment(コメント)
JGN創立メンバー 咲くやこの花館館長、園芸研究家 久山 敦氏
JGN創立メンバー 水戸市植物公園園長、園芸研究家 西川 綾子氏

►JGN NEWS LETTER 2019年初夏号 Vol.11(その2)
特集記事 庭石から広がる世界
高崎設計室有限会社代表取締役、石組師、京都造形芸術大学客員教授、JGN理事 髙﨑 康隆氏

►JGN NEWS LETTER 2019年初夏号 Vol.11(その3)
第2回 思い出のボタニカルアート
バジリウス・ベスラー作 銅版手彩色『アイヒシュテットの園』よりシクラメン

JGN創立メンバー オランジェリー・コレクション 代表 大根 恒子氏

►JGN NEWS LETTER 2019年初夏号 Vol.11(その4)
JGNインフォメーション

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この空間体験が古庭園の主題となっている場合もあり、一石で宇宙を表わす「須弥山石」と呼ばれている石が金閣寺(京都・鹿苑寺)庭園や醍醐寺三宝院庭園に見られます。なぜこれらの石がひとつの世界や宇宙までを連想させるかといえば、自然がフラクタル性を本質としているからだと思います。フラクタル性とは自己相似性と訳されますが、どこを切り取っても自然は自然の特徴を有しているからだと説明できます。それでは、全ての自然物が「自ずと然り」という完全性を有しているかと言えばそうではなく、人間の考える理想の形姿を体現している水石・盆栽・庭石は、やはり稀なものとなります。海岸や河川敷を歩いて、気に入った一石を見つけ出すのは楽しくも容易ではなく、一日歩き回っても見つからないときもあります 3 4

特集記事 庭石から広がる世界 高崎設計室有限会社代表取締役、石組師、京都造形芸術大学客員教授、JGN理事 髙﨑 康隆 小田原海岸の石
3 小田原海岸の石
特集記事 庭石から広がる世界 高崎設計室有限会社代表取締役、石組師、京都造形芸術大学客員教授、JGN理事 髙﨑 康隆 小田原海岸で見つけた石
4 小田原海岸で見つけた石
表現する石/思想性

 日本庭園には仏教や道教の思想を表現したものも多く、それらの世界観から「須弥山」「三尊」「蓬莱山」「鶴亀」「龍門瀑」といった石組のモチーフがよく見られます。

 また陰陽説の影響を強く受けた時代では、陰と陽を表す二つの石を意図的に組み合わせた石組の事例も残っています。存在感のある、天端が水平な石が、座禅を行うときに座る「座禅石」として使われることもあります 5

特集記事 庭石から広がる世界 高崎設計室有限会社代表取締役、石組師、京都造形芸術大学客員教授、JGN理事 髙﨑 康隆 天目山栖雲寺の石庭上が平らなものが座禅石
5 天目山栖雲寺の石庭 上が平らなものが座禅石

これら思想性のある石が知られている一方で、日本庭園の伝統的なモチーフは何と言っても「自然」です。『作庭記』は日本最古、あるいは世界最古の作庭理論書です。平安時代寝殿造り様式の庭づくりについてのその冒頭が「石をたてん事」。いかに石が、そして立てることが重要であるかが伺い知れます。『作庭記』において重要な概念として「生得の山水をおもはへて」があります。自然の風景を思い浮かべてという姿勢の中に作庭や石組の全てが言い尽くされていますが、その自然表現は作庭者によって様々となります。

エネルギーを放つ石/個性

 『作庭記』中の有名なフレーズに「乞はんにしたがふ」があります。一つ石を据えたら次の石は、先の石のエネルギーを受け止めて据えるという教えは難しそうです。でも、私のこれまでに主催した「石組塾」のプログラム「1時間で3石による枯山水を作る」において、全く石組は初体験という参加者が一人残らず完成させている 6 経験から、実際にやってみれば決して無理なことではないと思います。一つ一つの石が放つ存在感や動きを感じることが出発点です。まずは川や海岸で気に入った石をひとつ拾って来て、その石が最もかっこよく見える姿を色々な角度から眺めて見つけてみましょう。

特集記事 庭石から広がる世界 高崎設計室有限会社代表取締役、石組師、京都造形芸術大学客員教授、JGN理事 髙﨑 康隆 「石組塾」参加者の石組例
6 「石組塾」参加者の石組例

 作庭者の立場では、石の持っている真っ直ぐな線や面を水平あるいは垂直にして据え、空間を支配することがコツと感じています。複数の石を組み合わせていく場合は、水平・垂直に斜めを加えて空間を支配する全体の動きを構成していきます。

語りかける石/不変性

 群馬県甘楽町にある国指定名勝「楽山園」の庭園修復は、発掘・資料調査、整備計画・設計、復元整備工事と続いて、2012年の公開までに15年を要したプロジェクトでした。事業開始時点ですでに失われていた庭石や、土砂に覆われて見えていなかった庭石も相当数あり、残されていた石の状態からは史資料に書かれている瀧などがどのように復元できるものか想像もできませんでした。それでも、1997年に初めて現地を訪れた時に気が付いたことがありました。三つの庭石(その後、「龍門石」「黄金石」「拝石」と推定)が作る庭園の中心軸が、借景とされる熊倉山に一直線に向かっているという事でした 7 。そしてその軸線は、後の発掘結果から建物の柱の礎石や雨落遺構などの主要軸線とも一致している事が判りました。

特集記事 庭石から広がる世界 高崎設計室有限会社代表取締役、石組師、京都造形芸術大学客員教授、JGN理事 髙﨑 康隆 楽山園庭園の主軸 遠くに見える熊倉山に向かっている
7 楽山園庭園の主軸 遠くに見える熊倉山に向かっている

『楽山園由来記』という史料の中には、「いろは四十八石」という主要な庭石の名前が列記されています。これらの庭石も多数が失われているのですが、上記の軸線を作っている三つの庭石や、現在も池の中で重要な存在感を放っている「羽衣石」(推定)などが、江戸時代初期と現代とをつなぐ役割を果たしていると言えます 8

特集記事 庭石から広がる世界 高崎設計室有限会社代表取締役、石組師、京都造形芸術大学客員教授、JGN理事 髙﨑 康隆 楽山園の「羽衣石」
8 楽山園の「羽衣石」

石から感じることは、時代を隔てても通じるものだと感じます。復元結果が想像もつかなかった瀧の修復ですが、多数の庭石の中で一石だけは当初から全く動いていないと確信できるものがありました。その石を起点にして、隣り合う一石一石の据え直しを行なっていくと、水の流れ、落ちる流路が復元できました。まさに「乞はんにしたがふ」作業の積み重ねの結果です。

新たな世界をつくり出す石/現代性

 これまで見てきたように、古庭園において庭石が表わしたものは、時代背景を踏まえた思想や自然であったと言えます。では、現代空間における庭石にはどのような可能性があるでしょうか。コンクリート、ガラス、金属といった素材に調和するものとして根府川石があります。また、現代社会の変化するスピードに合った素材としての石には「不変性」はどのような意味を持つのでしょうか。風化速度の速い砂岩や凝灰岩の出番かもしれません。時代の感性が石に求めるものは「カワイイ」「ヤバイ」「ポップ」といったデザイン性であり、リゾートや商業空間における「映える」といった役割であり、私はそれらも視野に入れて庭石空間を提案して「庭石」の需要を喚起し、閉山相次ぐ全国の採石場を活性化したいと思っています 9

特集記事 庭石から広がる世界 高崎設計室有限会社代表取締役、石組師、京都造形芸術大学客員教授、JGN理事 髙﨑 康隆 根府川石の露頭   閉山が危ぶまれる採石場にて
9 根府川石の露頭 閉山が危ぶまれる採石場にて

  
 2013年に開園した世田谷区の「帰真園」では、「福祉・教育・環境」という三つのテーマを設定して作庭しました。「お手付き石」を配置することで手すりの無い岩場の階段を実現し、触感も楽しめる工夫。視覚障害のある来園者が水音を劇的に感じ取れる水源の庭石配置。瀧と流れに接近して視点場を作り、車椅子や
子供の目線だからこそ楽しめる水景を作ることなど、庭石で提案できることを複数実現しました 10 。世田谷区の豪徳寺に因んでの招き猫を組み込んだ石積は、現代における宗教性や「カワイイ」という感性を踏まえた提案です 11

特集記事 庭石から広がる世界 高崎設計室有限会社代表取締役、石組師、京都造形芸術大学客員教授、JGN理事 髙﨑 康隆 帰真園のポップな石組
10 帰真園のポップな石組
特集記事 庭石から広がる世界 高崎設計室有限会社代表取締役、石組師、京都造形芸術大学客員教授、JGN理事 髙﨑 康隆 招き猫   写真中央よりやや右、上にリボンを表す小さな石が二つ載っている
11 写真中央よりやや右、上にリボンを表す小さな石が二つ載っている

世田谷区は独自の教育システムを実践していて、小・中学校から日本の文化について学ぶために独自の教科書を作っています。伝統文化としての庭園を学ぶ場として、帰真園の石組みの中には「蓬莱島」「舟石」「鯉魚石」「臥龍石」などを配置してあります 12

特集記事 庭石から広がる世界 高崎設計室有限会社代表取締役、石組師、京都造形芸術大学客員教授、JGN理事 髙﨑 康隆 左下から右上に向かって、富士山の形をした「冨士石」、四角い「蓬莱島」、反り返った形状の「舟石」、滝の中央には、鯉が滝を上る姿に似た「鯉魚石」が並ぶ
12 左下から右上に向かって、富士山の形をした「冨士石」、四角い「蓬莱島」、反り返った形状の「舟石」、滝の中央には、鯉が滝を上る姿に似た「鯉魚石」が並ぶ

 街並みや住宅から植物がどんどん排除されていく現代、自然の象徴としてメンテナンスフリーの庭石の導入も戦略化していきたいなどと思います。「一家に一石」はいかがでしょうか。

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