【期間限定公開中】植物百般 インタビュー
「来た道、行く道、バラの道?」(その4)
JGN創立メンバー 田中敏夫 

Gadenetバラ・フェス2021
『Gadenet』JGN会員限定記事 期間限定公開

バラ・フェスの開催に合わせ、これまで『Gadenet』でご紹介してきた、様々な角度からとらえたバラに関するJGN会員限定記事を公開いたします。バラの奥深い魅力を感じていただければ幸いです。それぞれ約1か月間の期間限定ですので、お見逃しなく!

►6/3~6/30公開 植物百般 インタビュー「来た道、行く道、バラの道?」①~④ 田中 敏夫氏※期間限定公開中!
►7/1~7/28公開 JGN NEWS LETTER 2019年初秋号 Vol.12 特集記事
ハマナスから生まれたハイブリッドルゴーサ系統のバラ 御巫 由紀氏

►7/29~8/25公開 JGN NEWS LETTER 2019年初秋号 Vol.12 第3回 思い出のボタニカルアート
ピエール・ジョセフ・ルドゥーテ作 色刷り点刻銅版画『バラ図譜』よりRosa Sulfurea 大根 恒子氏

►8/26~9/22公開 ガーデナーの泉 バラの樹形を楽しむ①② 田中 敏夫氏
►9/23~10/20公開 Nurseries vol.25 大森プランツ
►10/21~11/21公開 植物百般 インタビュー「ニュージーランドのバラ事情」①~④ 御巫 由紀氏

今年もまた、バラの季節がやってきました。色も形も多彩な花を見せ、その香りも魅惑的とあって、人気、知名度共にナンバーワンの植物と言っても過言ではありません。剪定の仕方、注意すべき病害、そして、肥料の扱いなど、植え方育て方に関する情報の多さは、ファンが多いバラならでは。でも今回は、一味違った切り口で、田中敏夫さんが歩んだバラの道に咲いた、人とバラにまつわる物語に耳を傾けてみませんか?バラの奥妙を発見する、素敵な寄り道になりそうです。
植物百般 インタビュー「来た道、行く道、バラの道?」JGN創立メンバー 田中敏夫 
► 田中 敏夫(たなか としお)
グリーンショップ音の葉 ローズアドバイザー
重工業系企業を退職後、バラの販売業を始める。2009年から、園芸店に非常勤スタッフとして勤務、販売と管理にあたる。ビジネスの現場で培ってきた知識と経験は、一味違うバラの品揃えと共に、店を訪れるお客様に喜ばれている。バラの文化や歴史に、さまざまな角度からフォーカスするブログ「バラ咲く庭の物語」を更新中。JGN創立メンバー。
「来た道、行く道、バラの道?」(その4)

►「来た道、行く道、バラの道?」を初回から読む

園芸ショップの販売、バラの仕入れ管理を担当する現在。田中さんが今気になるのは、ガリカ。そして、バラを作りだしてきた育種家にも魅かれています。

JGN事務局スタッフ(以下JGNで表記):
じっくりと時間をかけて読みたくなりますね。

田中:
バラ愛好家も含めて、世界の育種家を調べてみたいという気持ちもあります。

まだまだ知りたいことがたくさんあると語る田中さん。洋書からも新たな発見や気づきがあるそうです。

まだまだ知りたいことがたくさんあると語る田中さん。洋書からも新たな発見や気づきがあるそうです。

JGN:
現代の著名な育種家は、よくお名前をみかけますが。

田中:
古くは1800年代の育種家についても書きました。現在26人くらい調べたんですが、作出したバラと絡み合うようなそれぞれの物語があって、興味深いです。

JGN:
既にブログに執筆した人で、どなたかご紹介いただけますか?

田中:
よく知られた人ですが、皇帝ナポレオンの皇妃、ジョゼフィーヌ。育種家ではありませんが、バラの収集家として名を残しています。彼女の依頼で収集されたバラコレクションが交配親として新品種を生み出すことになったのですから、その意味では彼女の功績は大きかったと思います。とかく、社交界での艶っぽい噂話が先行する人ではあったようですが。でも、このコレクションは普仏戦争時の攻撃で、失われてしまうのです。

JGN:
バラにまつわる物語というのは切ないものが多い気がします。

田中:
ハッピーエンドといかない話は、いくつかありますね。戦争とバラの関連を追ってみた時に、そう感じました。

JGN:
印象に残ったエピソードはありますか?

田中:
マリー・ヘンリエッタ・ショテック、当時のオーストリア・ハンガリー帝国の人です。伯爵家に生まれ爵位を継承するのですが、社交生活よりもバラに情熱を傾けた人だったようです。第一次大戦で館につくったバラ園は壊滅的な被害を受け、戦後彼女は、バラ園再生に奔走します。

マリー・ヘンリエッタ・ショテック。心からバラを愛した女性伯爵だった

JGN:
戦時下では、バラよりも食物だったのでしょうね。

田中:
そうですね。ジャガイモやトウモロコシが作られていたようです。どこの国も同じような状況だったのでしょうけれど。そして、いくつかの希少種が失われてしまった。

JGN:
どんなにバラを育てたいと思っても、戦況が許さなかった。

田中:
その後、第二次大戦で彼女の庭はソビエト軍によって、破壊しつくされてしまいました。バラ園は、往時の姿を取り戻すことはできず、彼女は失意のうちに、83歳の生涯を閉じます。館は現在では、博物館になっているそうですよ。

現在の館の様子。当時は、広大なバラ園があったが、残念ながら今は存在しない。

現在の館の様子。当時は、広大なバラ園があったが、残念ながら今は存在しない。

JGN:
うーん。無念だったでしょうね。

田中:
彼女の名を冠したバラもいくつかあります。コルデス社からはRosengräfin Marie Henriette
が2013年に発表されました。彼女の生誕150年を記念したものだそうです。

JGN:
物語を聞く前と後では、きっと、同じバラでも、受ける印象が違ってきます。

田中:
さて、他にもたくさんありますが、それはブログでお読みいただくことにしましょうか。このへんで、ちょっと外に出てみましょう。音羽サロン(注3)で、皆さんにご覧いただこうと思っているお店のバックヤードに行って見ませんか?

(注3)当会事務所で行われるサロン。会ってみたい人に膝突き合わせて話を聞いちゃおうという、現代版寺子屋企画。いわゆる講義ではなく、講師と参加者の闊達な対話で進められます。

►音羽サロンのこれからの予定はこちら

JGN:
ショッピングに寄っただけでは、見られない場所ですね。

経験に基づいた土の配合やいかに・・・

経験に基づいた土の配合やいかに・・・

田中:
仕入れたバラの植え込みをする場所なんですよ。私が普段使っている土や肥料の配合についても話してみようかなあ・・・

JGN:
プロの配合、ぜひ、知りたいです。悲しい物語の後は、土に触れてバラを植えてみよう・・・