2023年、代々木公園 オリンピック記念宿舎前広場で新たな試みが始まります。 ガーデンデザイナー吉谷桂子氏が制作するサステナブルスタイルのガーデンが誕生するとともに、ガーデンコンテスト「東京パークガーデンアワード」が創設されます。コンテスト最大の特徴は宿根草を活用した「持続可能なロングライフ・ローメンテナンス」のガーデンコンテストであること。デザインはもとより、植物や土壌の高度な知識が求められる、今までのものとは一線を画すガーデンコンテストです。 審査は書類審査から始まります。審査を通過した5名の入賞者には、それぞれ約80㎡のスペースにガーデンを制作していただき、3回の審査を経てグランプリが決定します。 皆様のご応募を心よりお待ちしております。 |
第1回東京パークガーデンアワード ~公園を新たな花の魅力で彩る~ ガーデンデザインコンテスト募集概要 |
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公式HP | ►公式HPでの詳細はこちらから ►募集要項はこちらから |
作品テーマ | 宿根草等を活用し、見た目の美しさやスタイルだけではなく、持続可能な社会に相応しく、ロングライフ・ローメンテナンスな花壇*をテーマとした作品を募集します。 *ロングライフ・ローメンテナンスな花壇:丈夫で長生な宿根草や球根植物を中心に、季節ごとの植え替えをせずに、主に植えっぱなしの宿根草で、異なる季節に開花する花壇。 |
応募期間 | 2022年8月26日(金)~10月20日(木) |
参加者決定 | 2022年10月末頃 |
制作者による植栽 | 2022年12月上旬、2023年2~3月を予定 |
グランプリ選考期間 | 2023年4月~3回の審査を経て2023年10月に最終審査結果を発表予定 |
ガーデン設置場所 | 都立代々木公園 オリンピック記念宿舎前広場 [住所]渋谷区代々木神園町、神南二 |
お問い合わせ先 | 事務局:東京都公園協会 公益事業推進課内 tokyo-pga.sm@tokyo-park.or.jp TEL:03-5510-7187 |
情報提供 | ガーデン&プロダクトデザイナー 吉谷桂子様 「吉谷桂子のガーデンダイアリー~花と緑と豊かに暮らすガーデニング手帖~」: https://www.dinos.co.jp/garden/keiko_yoshiya/ Gadenet(ガデネット)会員情報マイページ:https://gadenet.jp/keikoyoshiya/ |
モデルガーデン ~東京の新たな花壇スタイルの提案~ コンテスト花壇の整備に合わせて、東京の新しい花壇スタイルを提案するモデルガーデンをコンテスト会場の隣、オリーブ広場に設置します。ロングライフ・ローメンテナンスをテーマに、宿根草等を中心として、植物自身が持つ生命力で植物が成長して枯れるまでの四季の変化を楽しめます。 日本を代表するガーデナーの技術を体感できる「おとなの庭」は、背景の明治神宮の森との調和や植物の高低差、花の形や色まで計算しつくされた芸術の域に近い繊細な技術が見どころです。 日本を代表するガーデナーがデザインしたユニークな形の庭を子どもたちと一緒につくります。土や植物、生き物に触れられる空間を創出することで、子ども達のウキウキ・ワクワクを引き出します。 ガーデンマルシェや花壇づくり市民向け講座、緑に関するワークショップなどを実施予定。 |
都立公園では、令和4年春の浮間公園を皮切りに、夏の府中の森公園、秋の駒沢オリンピック公園、冬の葛西臨海公園において、大花壇やLEDイルミネーションで演出するなど、四季を通じた花と光の演出による新たな魅力の創出のための取組を展開しています。その一環として、「東京パークガーデンアワード」を実施します。 |
►TOKYO PARK GARDEN AWARD のモデルガーデンの考え方 その1 TOKYO PARK GARDEN AWARD のモデルガーデンの考え方 この秋、代々木公園内に作庭の計画をしているのは、宿根草を中心とした庭です。実際の一般公開は、来年の春、桜の咲く頃以降の予定です。 ↑は、現場を見て最初に描いた鉛筆スケッチ、完成イメージです。宿根草のフィールドのような。アイデアを考えていたのは、まだ気温の低い時期でしたが、描き終わった時は、梅雨に入っていました。 植物のことを考える時、その季節、気象状況に左右されやすいのですが宿根草の最盛期は梅雨の終わるころ。実は日本においては厳しい季節の始まりでもあります。イギリスの6-7月とは大違い。 着彩スケッチは 8月、現実に宿根草はシードヘッドになったものも登場する時期です。 同時に実際に植えたい植物も8月の終わりの発注。すると、思っていた品種の在庫切れがいろいろ。この業界では、植え付けの半年前、だいたい六月に予約を入れるので、これは懸念材料でした。いまのところ、フロミス・ルッセリアナやアムソニア・フブリヒティがなかったり。アリウム・ミレニアムがアリウム・サマービューティに。完成イメージのスケッチは、絵に描いた餅でありながら、デザインのイメージを他者と共有するために有効です。さらに、宿根草の成熟に3年はかかり、来夏すぐにこうなるわけではないので、ここに、一年草のニゲラなどが参入予定。 庭の名前は、「Cloud garden」 クモニワ、雲庭です。 プランの段階で、ボランティアで参加を募るガーデニング仲間たちが、植物ベッドに踏み込まずにメンテナンスがしやすい構造にしたかったのと、水捌けと風通し確保のために、このような形にしました。ここ数年、土の水捌けや根張りに関して神経質になっているため、レイズドベッド(盛り土花壇)です。 ↑は、ほとんど最初の打ち合わせの時点で思いついていたスケッチ。即興で、ボールペンで描いた。ファースト・インプレッションで沸いたイメージ。最初は、雲というよりも、アメーバでした。当初は、樹木・灌木を植えることができないという規定を知らなかったので、樹木も入っていますが、現在は、宿根草がメインで。 ロゴタイプはパソコンにあったフォントからの最初のインプレッションから。実は、庭のスケッチよりも先に、誰がロゴタイプをデザインするのか。そんな話題になる前早々、私が勝手にいくつかの案を出していました。私の元職の杵柄にて。ノーマルなゴシックやフーツラなどのフォントを使用したロゴも作りましたが最初から手書き風のロゴで、と思っていて、その後、何日も時間をかけオリジナルを作りました。 草の生えてるロゴなど、あまり見かけないかな。と、思いまして。オーガニック、生物多様性の意味も込めて、ナナホシテントウ虫のキャラクター付きです。 ロゴによって、若い子たちにも興味を持ってもらいたいので、popなイメージを目指しました。 勿論メインの内容は「アワード」。多くの方々にむけて募集、ぜひとも、応募をしていただきたいガーデン・コンテストです。 しかし、一年に渡って、ロングライフなコンテスト。審査も数回に渡るので、なかなかの挑戦です。なので、どんな内容で挑戦をするべきかのヒントになるようなことも明記しておきたく思います。もちろん、それは募集要項に書いてありますが、ここでは私なりに思うところを。そして、このたびのコンテストの募集要項に沿って、具体的にどんなイメージか。 20年以上前に、オランダやイギリスで台頭のはじまったニュー・ペレニアル・ムーブメントがそれに近いといえます。でも、オリジナルの考えで迫るアイデアも広く募集中ですので、この考えは一助と思ってください。 New perennial movement (新・宿根草主義)、またの名を、ナチュラリスティック・ガーデニング、あるいはナチュラリスティック・プランテング(自然主義的な植栽)の考え方を基本とした、ガーデン・デザインの庭です。(↑ 今年の北海道銀河庭園 植えたばかりの宿根草、スタキス ’フメロ’ 北国北海道なら、美しく夏を越せるはずと、選びました。「フメロ」といえば、ピート・アウドルフさんの庭のある土地の名です。でも、代々木には、どうか???実験済みではないので、今回は、選んでいません) ►TOKYO PARK GARDEN AWARD のモデルガーデンの考え方 その1 ナチュラリスティック・ガーデン ~ベースにしている4つの考え~ さて、いままで、何度か講演会やこちらのブログでも話題にしていきましたが、ナチュラリスティック・ガーデン、現在、私がベースにしている4つの考えとして 1 Pleasant experince サスティナブルな=持続可能な庭作り。というだけ、でしたら、リュウノヒゲや生長の遅い樹木などで、静かな緑の庭も好きです。良いのですが、今回は四季折々に変化があり、心地よい、楽しい発見、自然界に見いだすことのできる美しい植物の色や形、また、季節毎の変化だけでなく、変わりゆく時代。いえ細かくいえば、いっときも同じにならない時間や環境の変化に感受性を開いて、理想的な自然(ナチュラリスティック)の風景を、デザイナーの力量を総動員して、綿密な計算計画の上で再構築する。結果的に、人の目を楽しませること。 これは、まあぁ!何年かかわっていても、簡単じゃありません。簡単なようで、非常に難しい。 花が満開に咲いていれば、大多数の方々が満足してくださるでしょうけれども、それとも違う。そして、オーナメンタルグラスを、雑草でしょう?なぜ? と思う方もいらっしゃる事実と向き合って、20年以上。 春・夏・秋・冬に見所のある品種選びがポイント。一瞬だけ美しく後の季節に問題の起こる品種はNG。植えない!とはいえ、秋冬の枯れ色、ブラウン、枯れた色=汚いとの評価もあるので、この点も評価の変化に期待しつつ…。 また、順序が逆になりますが、下記 2 を満たして、眺めの美しさ。楽しさ。単純ではなく、個人差あり。 なるべく長生の宿根草。季節ごと、数年ごとに植え替えを必要としない。環境に合った品種を選ぶと植物の倒伏も少ない。しかし、垂直に自立する種類を選ぶのも重要。花殻摘みやまめな剪定をしないとか(連続開花をさせたい時は、花殻摘みはマストですが) 2〜3年で植物が成熟すると根っこ同士のコミュニティができて、ほかの雑草が生えない。そうしたことへの適合植物を選ぶこと。ただし植え付け初年度からそうならないので最初の年の雑草取りは超重要。 ロウメンテナンスの庭づくりでは、植物に対し過保護にしないことも課題で、その匙加減はちょっと難しい。いいだしたら、まだまだありますが、本日はこの辺で。 こうした考えは、個人だけでなく公共の庭にも期待できるスタイルといえます。それで、ニューヨークのハイラインは超有名ですが、ロンドンオリンピック以降、イギリスの街の公共花壇にこのタイプが増えているのでした。 園芸的には、害虫も含めて、多様な生物の容認が基本です。庭には、野鳥やカエルや昆虫いろいろ。でも、困るのがモグラやカラスとか、都会にはいませんが、自然が豊かな地域だとシカとかアナグマとか。困りもの多し。それでも、道を探していく。というような。 |
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これはひょっとすると、私の個人的な経験ゆえの見解になってしまうのですが、1992年2月から7度の春夏秋をイギリスのロンドンに住み、ガーデニングを初歩から経験した、その時、幸い周囲にオーガニック・ガーデニングに熱心な人たちがいたことと、イギリスのガーデニングの流れがオーガニックに向かっていたので、オーガニック・ガーデニングは、当たり前のことでした。最初の常識がオーガニックから始まったので、日本での常識を知らなかった。アブラムシやナメクジをオーガニックに駆除する方法を金曜日の8時、ゴールデンアワーで放送するようなお国柄。日本よりも涼しいし、藪蚊もいない害虫も比較的に少ない環境です。
ところが、日本の自然とくに夏は、生やさしくない印象です。日本から園芸書を送ってもらうと、園芸書の多くには、病気がでたら対処的にこんな薬、農薬を使えばよいとたくさんの情報が本にでていました。その通りにしないととんでもない目にあうのだろうか。と、恐れてもいました。病気にも害虫にもさまざまな種類があり、すでに温暖度の高さはイギリスとは比較できない。さらに高温多湿なので、当時、夏はわりに低温乾燥のイギリスで健康に育つ品種が日本で真っ当に育つのは難しいところも多々ありましたが、最近では、これはダメでもこっちは大丈夫。とのバリエーションが増えました。 誰かのアドバイスも役にたつけれども、それぞれの地域でかなり異なる。結局体験で理解していくほかないので、この意識をもって前に進むという結論です。容認事項もいろいろあり。自分も生き物で、生き物どうしの同士のバランスをどうとるか。 特に「長生きの宿根草」や大きくなりすぎない灌木樹木をうまく取り入れて、日本の長い園芸の歴史で、それがどういう植物なのかは、実はかなりわかっているのに、灯台下暗し。な感じがしたのは、イギリスから戻って、日本の在来種の植物は多種あって、それもそれぞれに美しいので、どのように取り入れるのか。そこで、冒頭に描いたこと。 Fundamentals 植栽設計の基本的な構成要素は、さまざまな個性を持った植物の組み合わせ。それが栽培環境にあった植物によって構成されている必要があります。 視覚的に喜びをもたらすような効果的な組み合わせを行うには、使用する植物の視覚的な特徴を理解すること。 人生の学びに終わりがないことを痛感する、庭への視点です。 (吉谷桂子のガーデンダイアリー ~花と緑と豊かに暮らすガーデニング手帖~より抜粋) |
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