本コーナー初回を飾るのは、大場秀章代表理事のインタビューです。
日本の園芸趣味家には、あまり浸透していない植物の学名。「学名アレコレ」と題した音羽サロン(注)開始前に、学名を敬遠していた事務局スタッフが、恐る恐るインタビューしました。 (注)当会事務所で行われるサロン。会ってみたい人に膝突き合わせて話を聞いちゃおうという、現代版寺子屋企画。いわゆる講義ではなく、講師と参加者の闊達な対話で進められます。 |
► 大場 秀章(おおば ひであき) 1943年東京生まれ。 理学博士 東京大学名誉教授。専門は、植物分類学と植物文化史。ヒマラヤや中国奥地などの高山植物を研究し、フィールドワークに取り組む。植物全般、ボタニカルアートにも造詣が深い。JGN代表理事。 |
JGN事務局スタッフ(以下JGNで表記):
「学名」と聞くと、難しい、わからないものと怖気づいてしまいます。
大場:
全く植物に関わったことがない、大学の教養課程の学生に学名について教えることになった時は、資料をどう作るかで苦労したことがありました。園芸を楽しみたい人なら、学名を知っていると植物についてより充実した理解ができると思う。学名は世界共通だから、世界中の人と植物の話もできるしね。
JGN:
では、いよいよ学名について伺ってみます。
大場:
遠回しみたいだけど、「種(しゅ)」について最初に説明しておくのがよいと思う。植物では種は「似ていて区別ができない個体は同じ種」と考えるんです。「形が似ていて同じものは同じ種に属する個体、種である」ということを記憶しておいて欲しいと思います。
JGN:
形が同じということなら、見ればある程度わかりそうですね。
大場:
植物は、同じ種に属する個体同士は正常な種子をつくるけれど、形が違うもの、つまり別の種を掛け合わせても種子ができる場合がある。多くは育っても繁殖能力がないけど、ちゃんと発芽して育つ種子ができちゃうものもあるんです。動物は普通、子供には生殖能力がない。これは植物と動物の大きな違いです。
JGN:
そう言われてみれば、確かに。
大場:
このことが、多くの人々が楽しむ園芸を成り立たせているとも言えますね。
JGN:
どうしてですか?