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2026年9月12日
JGNイベント
『大場先生の植物学カフェ2026』
東京大学正門前の名喫茶でレクチャー

目次

►1.イベント内容
►2.イベント詳細(お申込み)
►3.関連動画
►4.限定公開 特集記事 植物の珍奇な姿・驚きの能力
►5.限定公開 植物百般 インタビュー「ガクメイってなんだ?」

 

2026年9月12日JGNイベント『大場先生の植物学カフェ2026』東京大学正門前の名喫茶でレクチャー

JGNイベント
大場先生の植物学カフェ2026

植物学者・JGN代表理事 大場秀章さん
東京大学正門前の名喫茶でレクチャー

植物学者の大場秀章さんのお話を聞いて・語って・知る、植物学カフェ。2回目の開催となる今回は「葉・Leaf・Foliage」をキーワードに、講師・参加者同士で気楽に話せるサロン形式のイベントです。
会場は、東京大学正門前にある1952年開業の名喫茶ルオー。昭和レトロな雰囲気はそのままに、新しい風を感じる店内でのひとときをご一緒しませんか?

講師プロフィール

東京大学名誉教授、東京大学総合研究博物館特招研究員、植物多様性・文化研究室代表。(一社)ジャパン・ガーデナーズ・ネットワーク代表理事。理学博士(植物分類学専攻)。
中学時代に植物採集に親しんだことから、植物学に興味を抱くようになる。東北大学助手などを経て、東京大学教授に。専門は植物分類学および植物文化史。特に中国奥地やヒマラヤなどの高山植物を研究し、日本人として初めて中国崑崙山脈周辺での総合科学調査に参加。その後も積極的にフィールドワークに取り組む。高山植物の他、バラをはじめとする植物全般、ボタニカルアートにも造詣が深い。『ヒマラヤを越えた花々』など著書多数。

►植物学者 大場秀章さんの会員情報マイページはこちらから
►前回の大場先生の植物学カフェの様子はこちらから

イベント内容

◆ 植物学者 大場秀章さんのレクチャー
間近で話を聞け、質問もできる貴重な機会です。

喫茶ルオー

下記の画像はイメージです。

2026年9月12日JGNイベント『大場先生の植物学カフェ2026』東京大学正門前の名喫茶でレクチャー 喫茶ルオー

►喫茶ルオーさんのInstagramはこちらから

 

JGNイベント
大場先生の植物学カフェ2026
講師 植物学者・JGN代表理事 大場秀章氏
開催日時 2026年9月12日(土)14:00~15:30
開催場所 喫茶ルオー
〒113-0033 東京都文京区本郷6-1-14
※本イベントに関するお問い合わせは、JGN事務局(info@gardenersnet.or.jp)へお願いいたします。)
アクセス 東京メトロ南北線 「東大前駅」 徒歩8分
東京メトロ丸ノ内線・ 都営大江戸線「本郷三丁目駅」 徒歩9分
定員 15名(先着順)
参加費 JGN会員:1,200円
一般:2,000円
学生(30歳以下):1,200円
※参加費は、会場での飲食費を含みません。各自ご負担ください。
※お一人様ワンドリンクのご注文をお願いします。(例:コーヒー(HOT)480円/紅茶(HOT)530円)
クレジットカードでのお申し込みについて
1 クレジットカードで参加費をお支払いの方は、以下の緑色の決済ボタンから該当するものを選び、クリック・タップしてください。

2 お手数ですが、複数人数のお申し込みは1名様ずつ決済手続きをお願いいたします。

3 緑色の決済ボタンをクリック・タップ後は、『ログインしないで決済へ』からお手続きください。

※クレジットカード決済は、㈱ROBOT PAYMENTの決済代行・決済システムを使用しています。以下「個人情報の取り扱いについて」にも記載がございますので、ご参照ください。
►「個人情報の取り扱いについて」はこちらから

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クレジットカード以外のお申し込み
※クレジットカード決済が出来ない方はEメールwebmaster2@gardenersnet.or.jpにてイベント名、氏名、電話番号を記入のうえ、お申込みください。お振込み先をご案内をいたします。
※ご入金を持って受付とさせていただきます。
※お申込みが完了した方には、詳細を改めてメールでご案内いたします。
@gardenersnet.or.jpからのメールが受信できるよう設定をお願いいたします。
お申込み締切 2026年9月9日(水)15:00に決済または振込み完了
キャンセルについて キャンセルは9月9日(水)15:00まで承ります。
※9月9日(水)15:00以降のキャンセルは、参加費全額をお支払いいただくこととなりますので、予めご了承ください。
※9月9日(水)15:00までのキャンセルは、クレジット決済の場合は全額、振込の場合は、振込手数料を差し引いて返金させていただきます。
一般社団法人 ジャパン・ガーデナーズ・ネットワーク
公式HP https://www.gardenersnet.or.jp
Instagram https://www.instagram.com/japangardenersnetwork/
YouTube https://www.youtube.com/@Gadenet
Gadenet(ガデネット)
会員情報マイページ
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住所 〒102-0083 東京都千代田区麹町2-10-3 エキスパートオフィス麹町1階
TEL 03-4405-1033
お問い合わせ ►お問い合わせフォーム

 

【顔が見えるJGN!】
2022年 年頭に寄せて JGN代表理事 大場 秀章

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JGNイベント記念限定公開!2026年8月11日~9月14日15:00
特集記事 植物の珍奇な姿・驚きの能力


東京大学名誉教授・JGN代表理事 大場 秀章
 
特集記事 植物の珍奇な姿・驚きの能力 東京大学名誉教授・JGN代表理事 大場 秀章氏

 昨今、珍奇植物に注目が集まっていますが、人の手によって姿かたちの変わったものが選抜されてきた園芸品種ばかりではなく、地球上の様々な環境に適応して進化した結果、驚きの能力や形態を持った植物たちが数多く存在します。今回は、多種多様な植物を見てきた大場秀章代表理事に、今までに出会った中でも、特に印象深い植物を紹介してもらいます。植物学研究の一端を垣間見ることにより、植物を、そしてその不思議を解明しようとする研究者をより身近に感じていただければ幸いです。(事務局)

レウム・ノビレ (セイタカダイオウ)

 砂漠並の乾燥地から一年中雨や霧に見舞われる多湿の地。これらの多様な生育地が揃うところはいかにも大山脈、ヒマラヤである。私は1972年からおよそ20年、間隔を置いて夏の期間をヒマラヤの高山で過した。この話をすると、毎日、氷雪で被われた山々の雄姿が堪能できてよかったでしょう、と云われる。豈に図らんや、ほぼ毎日が霧や糠雨の連続で、滞在中、一日も山並みの雄姿を眺めることもなく終わった年もあった。

 規模も大きく、熱帯にも近いヒマラヤでは高山帯が出現する標高は日本よりも高く、3,800m位からで、それから上方に5,500m位までを占める。途切れることなくヒマラヤの高山植物の新顔が園芸界に登場するが、植物学上の魅力も尽きない。高山植物といえば、いずれも小型のイメージがある。根雪が遅くまで残り、積雪の始まりも早く、生育期間は標高3,500m位では年間50日を切る。なるほどと思いたくなるのだが、ところがである。最初はなかなか信じられなかったが、富士山頂の標高で、高さが1mにもなる高山植物があるのだ。

1972年にはジャルジャレ・ヒマールという大ヒマラヤの枝山脈を踏査した。5月で、まだ処々残雪があり、早咲きのシャクナゲの仲間が、また足元にはプリムラが咲き、その一種プリムラ・シッキメンシスは雪田跡に大群生していた。しかし、この年は私が求める植物には出会うことはできなかった。1977年、再び同じルートを歩き、ようやく念願の植物に出会えた。その名は、レウム・ノビレ(学名:Rheum nobile)、タデ科の植物である。


1小さな氷河末端の湖畔岩礫地に生えた個体。茎は基部を除き半透明の葉に包まれている。

2レウム・ノビレは人の背丈に達する個体もあるという。この個体は標準の大きさであろう。地際の大きな葉はレウム・ノビレの開花前段階の個体の葉。開花まで6・7年かかる。(写真の人物は同行メンバー)

 この植物を発見したのは、自らシッキム・ヒマラヤを踏査した、当時世界で最も著名な植物学者だったジョセフ・ダルトン・フッカー(Joseph Dalton Hooker)だった。まだ彼がキュー王立植物園長になる前だったが、すでに南半球各地の探検にも携わり、世界の誰よりも世界中の植物を熟知していた彼をして驚嘆させずにはおかなったのがこの植物だった。1855年、帰国後すぐに出版に着手した『ヒマラヤ植物図譜』第19図版に、新種として自らのスケッチにもとづいてその奇妙奇天烈ぶりを紹介した。茎の大半が半透明な葉に包まれるが、葉の隙間から中を覗くと、タデ科のダイオウにそっくりの小さな花が密に着いているのが確かめられる。フッカーはこれを正しくダイオウ属に位置付け、‘気高い’を意味するノーブルのラテン語nobilisを種形容語にした、Rheum nobileの名を彼の見つけた新植物に与えた。


3 茎上方の手前側の葉を取り去り、内部様相を示す。多数のダイオウそっくりの花が密集している。

 1991年、研究仲間とともに再び、ジャルジャレ・ヒマールを訪ねた。1977年のレウム・ノビレとの出会いが忘れられなかった。この年は天候も穏かで、レウム・ノビレを多角的に研究するのには打って付けだった。仲間内での呼称だったセイタカダイオウの名がいつしか方々へと広がり、私もこれを和名に使っている。


4 氷河湖畔に群生したレウム・ノビレ。このように群生して生えていることはまれだという。多数の大きな葉は若年個体のもの。
14 レウム・ノビレ Rheum nobile (タデ科)。ネパール東部、ジャルジャレ・ヒマール、バンドゥケにて、1991年8月上旬に撮影。

 レウム・ノビレはとてつもなく変な植物だった。その変わりぶりのひとつは、普通の高山植物をはるかに超える大きさになることである。50日を切る生育期間に平地の植物並の高さに育つのだ。茎を包むように着く半透明の葉(正しくは苞葉)も謎だらけである。それは光を透過してしまうためなのか、光を反射してしまうために単に白っぽくみえるだけなのか。茎が木質化しないことから、レウム・ノビレは木本ではなく草本であるのは明らかだが、一年で種子から芽生え、開葉、開花、受粉、結実して枯れる一年草なのか、それとも2年あるいはそれ以上長生きする草本なのかも、ちょっと見ただけでは判らず、この点も謎である。

 このような問題を多くの専門家に協力してもらい、現地で調査研究したのが1991年だった。ヒマラヤの北側にあたるチベット高原の平均高度は5,000m近くあるが、そこに住み生活している人も大勢いる。だが、高山で暮す人が皆無の日本では高山の環境がよく認識されていない。今はそんなことはないだろうが、研究に欠かせないパソコンが、現地で正常には作動せず焦った。後で米国には高所使用可のパソコンがあることを聞いたが後の祭りである。そもそも電気など夢の場所であり、電源には自家発電機を用いるのだが、燃料のガソリンや発電機も含め、すべての機器を運ぶのはポーターである。50キロを超える機材は使用を諦めるしかなかった。

 レウム・ノビレについての疑問の多くはお互いに関連があり、これを解明するポイントのひとつが半透明の葉に絞られてきた。もし光が葉を透過するなら、葉で囲まれた内部は太陽熱を蓄えることができ、これを放熱することによって保温される。ある一定以上の温度が連続すれば細胞は中断することなく伸張を続け、結果として植物体が大きくなる。

 大きいことは長所にもなるが短所にもなる。例えば大きいと体内からの水の蒸発散は増加し、水不足が心配される環境で生きるには不利になる。レウム・ノビレは毎日が雨に見舞われる環境であり、水不足の心配はない。だから巨大化しても不利にはならない。だが何のために巨大化する必要があったのか?レウム・ノビレを前に観察や計測をしながらの議論は楽しかった。確かに謎の幾分かは解くことができた。

 どうしても現在の技術では解けないことは止むを得ないにしても、できる限り虱潰しに調べてみたい。どうしても知りたい重要な問題のひとつがその半透明の葉が光を本当に透過するのかだった。こうした光の特性を調べる機器に分光光度計がある。しかし、当時の分光光度計はトン単位の重量で、とても現場に持ち込める代物ではなかった。

 メンバーのひとりが、あるテレビ番組で、男優付きでレウム・ノビレを紹介したい、という取材話を手に入れてきた。協力することにして、こちらからも‘それなら、超多忙な俳優さんにお願いしたい’と注文を出し、実現することになった。過密のスケジュールを抱える超多忙な俳優なら、取材を終えたらすぐに帰国するはずである。現地からネパールの首都カトマンズまで、ヘリコプターをチャーターすれば1日で行く。そこから東京までも1日で、3日目にはドライアイスに護られたレウム・ノビレの生きた葉を分光光度計にかけることができる、と踏んだのだ。詳細は省くが、分析した葉からは、可視光は透過するが紫外線は吸収するという、涎が垂れそうな貴重なデータが得られたのだった。

 半透明の葉は内部を保温するだけでなく、紫外線から花粉や胚を保護する役目も担っている可能性がみえてきたのだ。これで葉が大きくなる原因は掴めたのだが、残念ながら何がメリットなのかを解くことはまだできないでいる。

 奇妙奇天烈なかたちをした植物は少なくない。しかし、そうしたかたちを植物は‘遊び’で創り出しているのではない。必然性があり、自然淘汰を経てのかたちなのだ。まだ多くでその役割を解明できないでいるのは残念である。こうした植物を栽培するなかで、その隠された得意技が見つかる可能性も少なくはないだろう。単にオブジェとしてだけでなく、我々ヒトと等価な多様性の一員として接して欲しいと思う。

 

JGNイベント記念限定公開!2026年8月11日~9月14日15:00
植物百般 インタビュー
「ガクメイってなんだ?」

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植物百般 インタビュー 初回を飾るのは、大場秀章代表理事です。

日本の園芸趣味家には、あまり浸透していない植物の学名。「学名アレコレ」と題した音羽サロン(注)開始前に、学名を敬遠していた事務局スタッフが、恐る恐るインタビューしました。

(注)当会事務所で2017年7月まで行われたサロン。会ってみたい人に膝突き合わせて話を聞いちゃおうという、現代版寺子屋企画。いわゆる講義ではなく、講師と参加者の闊達な対話で進められます。

JGN事務局スタッフ(以下JGNで表記):
「学名」と聞くと、難しい、わからないものと怖気づいてしまいます。

大場:
全く植物に関わったことがない、大学の教養課程の学生に学名について教えることになった時は、資料をどう作るかで苦労したことがありました。園芸を楽しみたい人なら、学名を知っていると植物についてより充実した理解ができると思う。学名は世界共通だから、世界中の人と植物の話もできるしね。

JGN:
では、いよいよ学名について伺ってみます。

大場:
遠回しみたいだけど、「種(しゅ)」について最初に説明しておくのがよいと思う。植物では種は「似ていて区別ができない個体は同じ種」と考えるんです。「形が似ていて同じものは同じ種に属する個体、種である」ということを記憶しておいて欲しいと思います。

JGN:
形が同じということなら、見ればある程度わかりそうですね。

大場:
植物は、同じ種に属する個体同士は正常な種子をつくるけれど、形が違うもの、つまり別の種を掛け合わせても種子ができる場合がある。多くは育っても繁殖能力がないけど、ちゃんと発芽して育つ種子ができちゃうものもあるんです。動物は普通、子供には生殖能力がない。これは植物と動物の大きな違いです。

JGN:
そう言われてみれば、確かに。

大場:
このことが、多くの人々が楽しむ園芸を成り立たせているとも言えますね。

JGN:
どうしてですか?

大場:
別々の種の個体を人工的に掛け合わせて、自然界にないものをつくりだすのは、園芸の面白みでしょう。違う種に属する個体を掛け合わせても 発芽力のあるタネ(種子)ができるということですが、これがなくして園芸は成り立たないでしょう。

JGN:
園芸店やスーパーマーケットで売られる、草花苗や野菜を見る目が違ってきそうです。

大場:
それではいよいよ、学名の話に移りましょう。種について説明したけれど、学名では種は、2つの語を使って表されているんです。例をあげてみましょう。
ヤブツバキなら、「Camellia」と「japonica」と2つの語を使って、Camellia japonicaと表すのです。同じようにバラの仲間のハマナスならば、「Rosa」と「rugosa」で、Rosa rugosaです。2つの言葉によって表わされている。これは、覚えておいてください。

JGN:
植物図鑑でみたことがあります。

大場:
Rosa」とか「Camellia」とか学名の最初にある語、これはバラやヤブツバキが属する仲間、すなわち「属」を表す名称で、属名というんです。

JGN:
属名ともうひとつ、2つの語で書かれていると、まるで人名みたいですね。

大場:
人の名前に似ていますよね。例えば、「山田」というファミリーの名があって、あなたはその中の「花子」だとする。植物の種の学名でいえば、「山田」が属名、花子やら太郎やらがもうひとつの語、種小名にあたる。2つの言葉で表す学名を最初に提唱したのは、カール・フォン・リンネという人でした。

JGN:
ここまで知れば、ひと安心・・・と思いきや、見慣れぬアルファベットが出現!これが噂のラテン語ですね。

大場:
そう、今話したように、学名を2つの語で構成するスタイルを考案したのはスウェーデンのリンネでした。リンネがその考えを述べたのは1750年代。18世紀の終わりくらいまで、特に西ヨーロッパでは、学術や宗教などの本を出版しようとしたら、ラテン語で書くのが普通だったんです。自国の言葉ではなくてね。だから、学名をラテン語で作るのはその当時としては、特別なことではなかった。その頃は、学問をしている人だったらラテン語は誰でも使っている普通の言葉で、学名もラテン語で書き表しても誰も驚かなかったでしょう。

JGN:
それにしても目に優しくないと言うか、難解と言うか・・・

大場:
英語に親しんだ人には、特にそう映るかもしれない。ラテン語とそれに由来するヨーロッパの言葉では名詞に性がある。性を捨ててしまっていちばん簡単になったのが英語かな。今は昔と違って、一ヶ国語を履修すれば良い大学も多いし、選択肢に中国語なども入っているから、名詞に性がある言葉を知るチャンスが少ない。だから、ラテン語の性も面倒に思ってしまう人が多いかも知れないね。

JGN:
そういえば、履修したフランス語で苦労した遠い記憶があります。

大場:
ラテン語は英語、ドイツ語、そして、フランス語の祖先の言葉だから、学んでいたら、フランス語も理解が早まったかも知れないですね。

JGN:
昔は、今と違って複数の言語に普通に接していたのですね。

大場:
グラマースクールという学校の名称を聞いたことがあるでしょう?グラマースクールでは、主にラテン語の文法を教えていた。さらに、ギリシャ語の文法も習っていたんです。でも、今は植物の新種を見つけた時、英語記載でも構わないということになった。つい50年くらい前まではラテン語で記載しないといけなかった。

JGN:
大きな変化です。

大場:
私が28歳のときに、初めて某大使館から招待状をもらったことがあった。その招待状はラテン語で書かれていました。1960年代くらいまでは、公式の格式ばった書類はラテン語で書かれるものもあった。最近はみかけないですけどね。

JGN:
それにしてもラテン語の性別となると、気後れします。

大場:
最初は、その言葉が男性か女性か中性か、ひとつずつ調べないとわからないでしょうから大変ですが、慣れてくると見ただけでわかるようになるものも多くあります。
語尾の形で名詞を分類すると、大きくは5つにわけて考えることができる。先に話したハマナスを表す学名を構成する「Rosa」という言葉は、rosarosamrosaerosaerosaと、規則的に語尾が変わります。

JGN:
日本語とはどう違いますか?

大場:
日本語の名詞「私」と比べてみようか。「私」を使って文章を作る時は、私へ、私の、私を、私によって、私から、などと助詞をつけて表現している。でも、ラテン語の名詞は、助詞をくっつけるのではなくて、名詞「私」そのものの語尾を変えることによって、同じような意味を表しているんです。先ほどの「Rosa」であれば、
Rosa・・・バラは、バラが、
Rosam・・・バラへ、バラを
Rosae・・・バラの
Rosae・・・バラに、
Rosa・・・バラによって、バラから、バラにおいて
という意味になる。もっと複雑な語尾の変化パターンもあるのだけれど、幸いなことに、学名で普通使うのは、いちばん最初の主格という「Rosa」、それに時々「バラの」を意味する所有格だけです。

JGN:
まずは主格だけ、覚えておけば

大場:
そうですね。それから、英語を話す時にも数量を意識させられるけれど、ラテン語の名詞も、1個は単数形で、2つ以上のものは複数形に変わります。学名のラテン語はほとんどの場合、単数形を使うだけなので、その意味からも楽です。

JGN:
ラテン語の語尾変化ですか・・・文法の授業を受けているような気がしてきました。

大場:
ちょっと、退屈になってきたかな?それじゃあ、ひと休み。「ager」の複数形主格は「agri」。何か思い出さない?

JGN:
「agri」??えーと、人名ではないし・・・・

大場:
英語のagricultureはどうでしょう。「agri」の単数形「ager」は野原を意味するのですよ。野原の複数形に耕すという意味のcultureが後ろにくっついて、農業というagricultureが生まれた。こんな風に意味をたどっていくのも、面白い。

JGN:
野原、でしたか。

大場:
ではもうひとつ。映画やテレビドラマで、オムニバスって聞かない?これは、すべてという意味を持っている「omnis」の複数形の「omnibus」。乗り物のバスは、ここに語源がある。バスはまさにみんなのための乗り物ですよね。

閑話休題。種(しゅ)の学名は2つの語でつくる、と言ったのを覚えている?

JGN:
人の氏名のように、ですよね。

大場:
そう。2つの語でつくる二名法の他に、多名法というのもあった。平家物語など古典を読んでいると、「どこそこの某の誰々の・・・」なんて名乗る場面があるけれど、植物もそんな風に長々と書かれる時代があったんです。しかも本によって書き方が変わっていたから、名前が出てきたときにそれが何だかがすぐにはわからなくなってしまった。

JGN:
何のための名前なのかわかりませんね。

大場:
リンネは、このままでは植物の理解を妨げる、と考え二名法を提唱しました。でも、そこに至る道は易しくはなく、相当試行錯誤をしたんです。リンネの苦労は、いつか音羽サロンで詳しく話したいと思っています。
難しいことはさておき、学名は2つの言葉からできているということと、頭の言葉は属名で次の言葉が種形容語だということを、覚えてください。

JGN:
昔に比べたら私たちはずいぶん楽をしているわけですね。

大場:
各種カードやパソコン、モバイルを使う時、自分で考えたパスワードを使う機会が増えているよね。同じように、植物の学名を意味のない記号にしたら良いのではないかという説を唱えた人もいた。そうならなくてよかったと思う。

JGN:
「パスワードは、数字とアルファベットの8文字以上を組み合わせてください」のように?

大場:
例えば、すべての化合物は元素記号を用いて書くとシンプルで美しいと言われることがあるけれど、植物はその対象の数が比較にならないくらい多いですよね。もし、植物がパスワードのような記号で記されていたら、この番号は何?とかあれは何番だとか、いつも翻訳表を肌身離さず持ち歩いて調べないといけない。何であれ、意味がある語でないと、とてもやっていけない。

大場:
さて、ここまでに話したのは、自然界にある、野生の植物に関する命名の方法。普段よく目にする園芸植物には、足りない部分を補う別のルールも駆使して名前を表記しているんですよ。

JGN:
どんなルールなのでしょうか?

大場:
「関山」というサクラの栽培品種は、「Cerasus serrulata‘Kanzan’」。野生植物とはちょっと違うでしょ?

JGN:
言葉が3つになりました。

大場:
栽培品種を示すには、二名法の学名の後にシングルコーテーション「‘ ’」で囲って品種名を書くというやり方をする。また学名はよく、やや右に傾いた字体イタリックで表記されることが多いけれど、栽培品種はイタリックを用いずに書くんです。

JGN:
野生植物でない栽培品種は、学名の後に品種名を記すのが決まりなのですね。

大場:
栽培植物の学名は、野生植物があてはまる「国際藻類・菌類・植物命名規約」(注1)と栽培植物のための「国際栽培植物命名規約」(注2)の双方を用いて名付けられています。このことは、学名が世界中で共通だと言われる由縁でもあるんです。

(注1)植物の学名に関する国際的な取り決め。規約はほぼ6年ごとに改定され、学名の取り扱いは常に最新の規約に従わなければなりません。

(注2)栽培品種(園芸品種)を命名するための国際ルールブック。混乱しやすい栽培植物の名前の安定化をはかるために、その規則と勧告を豊富な実例と共に記している。

JGN:
学名は、植物の世界共通の名前と思えば、理解できます。怖くないです!

大場:
そうですよ。他に質問は?

JGN:
すっかりやる気になりましたが、学名はどうやって覚えたら良いですか?

大場:
それこそ、人の名前を覚えるのと同じかなあ。バラならバラ、万年青なら万年青の仲間(今はキジカクシ科)と関心のある植物から少しずつ覚えていくのがいいんじゃないかな?100覚えれば、そこから先は少し楽になります。形容語もそんなに種類があるわけではなくて、組み合わせの違いだけになっていきますから。
学生には「試験をして欲しい。そうしたら覚えられる。」と言われたことがあります。試験をしてあげましょうか?

JGN:
う~ん・・・大人になってからの試験はキツそうだなあ。先生、また今度にしましょう。

(2016年9月2日掲載)

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