前440夜では、チャイナ・ローズが中国から直接あるいはインド経由でヨーロッパへもたらされたとお話しました。
実は同じ時代、ティー・ローズの元となった品種もヨーロッパへ渡っていました。
英国の植物学者C. C. ハースト博士(Dr. Charles Chamberlain Hurst:1890-1947)は1941年に公表した論文”庭植えバラの起源と発展についての覚え書き(Notes on the Origin and Evolution of Our Garden Roses)”のなかで”4種の基本チャイナ(The Four Stud Chinas)”という項目を設け、ヨーロッパにおけるバラ育種の発展に強い影響をもたらした4種のチャイナ・ローズについて論述しています。
そのうちの2品種は440夜で述べた、
スレイターズ・クリムゾン・チャイナ
オールド・ブラッシュ
でしたが、残りは、
ヒュームズ・ブラッシュ・ティー・センティッド・チャイナ(Hume’s Blush Tea Scented China)
パークス・イエロー・ティー・センティッド・チャイナ(Park’s Yellow Tea Scented China)
でした。ハースト博士はこの4品種から、鮮やかな赤、淡いイエロー、強く返り咲きする性質、ゆるやかにアーチングする枝ぶりなど、新しい性質がヨーロッパにもたらされたのだと論述しました。スレイターズ・クリムゾンとオールド・ブラッシュはその後育種されたチャイナ・ローズの元品種となり、また、ノワゼットやブルボンという新しいクラスが誕生するきっかけとなりました。
ヒュームズ・ティーとパークス・イエローは由来からチャイナ・ローズにクラス分けされていますが、ロサ・キネンシス(R. chinensis)と大輪花を咲かせる大型樹形のロサ・ギガンテア(R. gigantea)との交雑種とみなされ、大輪花・大型のシュラブまたはクライマーとなりスレイターズやオールド・ブラッシュとは性質を異にしていました。
後にこの2品種はティー・ローズの元品種とみなされることとなりました。
ヒュームズ・ブラッシュ・ティー・センティッド・チャイナ(Hume’s Blush Tea-scented China)- 1808 or 1809年
9cmから11cm径、とがり気味のかたちよい蕾は開花すると、20弁から30弁、開花時は高芯咲きですが熟成すると丸弁咲きへと変化します。ミルクにピンク色をわずかに混ぜ込んだような淡いピンクの花色、ブラッシュ(”刷毛ではいた”)と表現するのにふさわしいと思います。幅狭で、一見バラの葉とは思われないほどの長めで尖り気味の、明るい色合のつや消し葉、180cmから250cm高さほどの高性のシュラブとなります。
イングランドのヒューム卿(Sir Abraham Hume:1749ー 1838)が中国からヨーロッパにもたらしました。同時代、ヨーロッパにもたらされた4種のチャイナ・ローズのひとつとも、また、もっとも初期のティー・ローズとも言え、返り咲き品種の交配親となった歴史的に貴重な品種のひとつです。
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