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【PPPまちづくり 未来への視点】
『庶民の知恵だった「共」の再構築で、ウェルビーイングなまちづくりを』
涌井史郎氏(造園家、東京都市大学環境学部特別教授、JGN創立メンバー)に聞く

【PPPまちづくり 未来への視点】庶民の知恵だった「共」の再構築で、ウェルビーイングなまちづくりを 涌井史郎氏(造園家、東京都市大学環境学部特別教授、JGN創立メンバー)に聞く

PPPまちづくり 未来への視点
庶民の知恵だった「共」の再構築で、ウェルビーイングなまちづくりを
涌井史郎氏(造園家、東京都市大学環境学部特別教授、JGN創立メンバー)に聞く

国土のリスクマネジメントにおいて重要性を増すグリーンインフラや、その先にあるグリーンコミュニティの形成こそが、ウェルビーイングな未来の実現につながる――。こう語るのは東京都市大学環境学部特別教授で、横浜で開催される2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)で総合監修を務める涌井史郎氏だ。そして涌井氏は、その際にキーワードとなるのが、「共」の再構築だと説く。

涌井 史郎(わくい・しろう)プロフィール

1945年神奈川県鎌倉市生まれ。1969年東京農業大学農学部造園学科出身。東急グループの造園・植栽会社、石勝エクステリアを創設。主な作品として、長崎オランダ村に続くハウステンボス、千葉土気東地区ニュータウンなどのランドスケープデザイン、多摩田園都市などのランドスケープ計画を手掛け「愛・地球博」では、会場演出総合プロデューサーを務める。国連生物多様性の10年国内委員会委員長代行、環境省「国立公園満喫プロジェクト有識者会議」座長など、数多くの国・自治体・法人の委員を歴任。日本造園学会賞、黄綬褒章など受賞歴多数。著書に『景観創造のデザインデベロップメント』(綜合ユニコム)、『いなしの智恵』(ベスト新書)など。2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)の総合監修、岐阜県立森林文化アカデミー学長、自然共生化社会研究会代表理事なども務める(写真:栗原克己)。JGN創立メンバー。

成長から成熟へ—今、ウェルビーイングが注目される理由

最近、東京など大都市の開発では、「環境」が不動産に与える価値(環境不動産価値)への評価が高まり、緑を大きく取り入れる例が増えています。その理由についてどのようにお考えですか。

その話に入る前に、私なりの順序で説明させていただきます。

最近になって、世界の先進国、特に日本において、目指すべき未来を「ウェルビーイング(Well-being:身体的・精神的・社会的に良好で満たされた状態のこと)」という言葉で表現するようになってきたことに、まず着目してほしいと思います。これは非常に良いことです。

どちらかというと、今までは「成長」がキーワードでした。しかし人々が成長に虚しさを感じるようになって、これからは「成熟」であるべきだと考え始めています。財布が厚いことが幸福を支えるものではない。感動の体験、五感が動員されるような体験をしてこそ、幸福感が深まる――。そんな豊かさを深めることができる未来が非常に大事だということに、人々が気付き始めました。それがウェルビーイングという言葉に表われているのだと思います。

このように未来のベクトルが明確になってきた一方で、反省点もあります。それは、いつの間にか「共」という価値観が蔑ろにされてしまったということです。

歴史を振り返ると、人間は「自利利他」いう理念を磨いてきました。「自分が幸せであるためには、他者も幸せでなければならない」という考え方です。例えば封建時代は圧倒的に支配階級が強く、権力者は私権などまったく顧みる気はありませんでした。これに対して、地域住民は「結」などの共同体をつくり、共同作業を自ら行うことによって、公権力が私の領域に及ぼそうとする様々な干渉を排除する方向に進んだわけです。これが「共」という価値観です。封建時代の中で庶民が生き残る知恵であり、本来の人間の在り方、とりわけ農耕民族の日本人の在り方ではないかと思います。

ところがその知恵を、デモクラシーという言葉とともに官僚が巧みに利用し、「公」に「共」をくっつけて、広く社会一般を意味する「公共」にしてしまいました。「おらたちの村」という意識がどんどん失われて、「俺が住んでいる街」という話になってしまったのです。しかし、これから目指すウェルビーイングな暮らしの実現は、他者の手を借りることが不可欠で、一人ではできません。ですから、「俺の街」から「俺たちの街」へと意識を転換しなければならないんです。私はそれを「『共』の再構築」と呼んでいます。

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情報提供
造園家、東京都市大学 特別教授、JGN創立メンバー 涌井 史郎様
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