バラというと、英国をはじめフランスやドイツなど、ヨーロッパで盛んに栽培されているイメージが強いかもしれませんが、バラに魅せられた愛好家が大勢いるのは、南半球も例外ではありません。でも、日本には情報があまり入ってきていないのが現状で、ニュージーランドのバラ事情はベールに包まれています。2015年にニュージーランドを旅した御巫由紀さんから、現地のちょっと特殊な事情を伺ってみましょう。 |
► 御巫 由紀(みかなぎ ゆき) 千葉県立中央博物館主任上席研究員 千葉県生物多様性センター副主幹 千葉大学自然科学研究科博士課程修了、農学博士。千葉大学非常勤講師。世界バラ会連合ヘリテージローズ保存委員会委員長、NPOバラ文化研究所理事、国営越後丘陵公園国際香りのバラ新品種コンクール審査委員。 植物分類学が専門で、千葉県立中央博物館で植物の標本、貴重書・絵画等の資料管理を担当するかたわら、バラの野生種の分類と自生地の現状、品種改良の歴史を探る。毎年、春から初夏にかけてはバラの花を求めて国内外を巡るとともに、バラを中心とした講演会等で講師を務める。2018年3月には監修と文を担当した「魅惑のオールドローズ図鑑」が世界文化社より発行される。JGN創立メンバー。 |
厳しい制限がある中で、海外のバラを少しずつ導入しているバラのナーセリー、タスマン・ベイ・ロージズの他にも、特殊なバラ事情のお話が続きます。
御巫:
タスマン・ベイ・ロージズでは、海外のバラを輸入するため、他から虫や菌が入らないような温室をつくって、植物防疫の監理官のチェックを受けて・・・と手間と時間をかけた末、ようやく販売にこぎつけるのです。
JGN事務局スタッフ(以下JGNで表記):
流通しているのは、国内の品種ばかりなのですから、人気が高いのでしょうね。
御巫:
そのようです。でも、新しいバラが国外から入らなくなって、よりヘリテージローズを大切にしていこうという活動は盛んになっているように感じました。特に、ヘリテージローズの権威、マレイ・ラドカさんは、ニュージーランドのヘリテージローズの登録システムを作り、どこにどのバラがあるのかデータベース化して、絶えてしまいそうな品種はナーセリーに頼んで苗を増やすこともしています。
JGN:
海外からバラが入ってこない・・・。驚きました。他にも日本と異なるバラ事情はあるのでしょうか?
御巫:
墓地でヘリテージローズが鑑賞できる、というのはどうでしょう?
JGN:
お墓ですか??
御巫:
今回の旅で、合計4カ所の墓地を訪ねました。元々そこに植えられていたバラもありましたが、縁者がいなくなった墓所は、ヘリテージローズを植える場所になっていました。
JGN:
日本でも最近はガーデン墓地などと呼ばれるスタイルはあるようですが、ヘリテージローズが見られるとは。
御巫:
水も肥料もやれない、剪定も薬もなしと、手入れは何もできないから、その環境にあったバラが生き残ります。
JGN:
どんなバラが多いのですか?
御巫:
新しく植える時には、オールド、ヘリテージを優先的に植えていくようです。きちんとラベルがつけられているバラも見かけました。誰それの墓所にはどのバラが植えてあると、リストができている墓地もありました。
►「ニュージーランドのバラ事情」(その3)へ続く
(2018年3月30日掲載予定)