![]() 大森直樹さん(大鉢の果樹の前で) |
NHK趣味の園芸の講師としても知られる大森直樹さんが経営する果樹のナーセリー、山陽農園を訪れた 1 。岡山市の北東に位置する、かつて水田であった土地からは、遠くに山々が見える。約2ヘクタールの広さを誇り、その三分の一ほどはハウスが占めている。イチジク、ブドウ、モモ、カンキツ類、クリ、ナシ、カキ、キウイフルーツ、ウメなど、様々な果樹苗を生産。特にイチジク苗木は約50種類揃っており、品揃えは国内随一だ。かつては、500品種、年間12~13万本生産していたというが、現在はある程度品種を絞っており、大森さん曰く、「ニッチなところをやっている」とのこと。生産農家から手軽に家庭で果樹を楽しみたいという人々まで、果樹栽培のお手伝いをしている。
![]() 1 温室とその前に並ぶイチジクのポット苗 |
山陽農園は、明治40年に大森さんの祖父が創業した。大森さんは、大学では広告を学んでいたが、父親と将来について初めて話した時に、家業を継ぐ決心をしたという。それから、種苗会社で修行をしたり、ブドウのメリクロン技術を用いたウィルスフリー株養成についてニュージーランドで学んだりして経験を積んだ。帰国後は、実家の果樹苗生産を手伝いながら農学部の大学院で果樹の研究をした。父親が亡くなって農園を継いだが、十数年間は経営的に厳しく、通信販売から草刈り、営業に至るまで、一人でこなしたという。メディアに対しては、積極的に露出を図った。園芸ブーム前の一時期は、果樹苗だけではなく、花苗も大掛かりに販売していたそうだ。しっかりと育てた株を見本にして、苗木の売上につなげていた。
その後果樹専門に戻り、現在は、通信販売、種苗店、コンサルティング、大手種苗会社への納品がそれぞれ同程度の売上だという。生産農家を幸せにしたいという想いから、果物生産を生業にしている人が困っていることを調べ、その解決に向けての助言もするという。
大森さんは、鉢物を育てるのは楽しいと語る。見栄えのする見本株も手をかけて育てている。植え替えが難しい大鉢の果樹は、ドリルで培養土に穴を開け、その穴に新しい土を入れる、という作業 2 ~ 4 で樹勢を良くする方法を提案。培養土にもこだわり、果樹の育成に最適な独自の調合をおこない、販売もしている。