![]() 小野康裕さん(ビニールハウス内にて) |
![]() 1 事務所に連なる直売ストア |
5月上旬、野菜苗を生産している文化農場を訪れた。代表の小野康裕さんとは約15年前に知り合い、鋭い感性でマーケティングをおこなっているのを聞いて興味を持っていたが、農場を訪問するのは初めてのことだ。姫路駅から車で約30分北上すると、周りを山に囲まれた盆地の中、幹線道路沿いに文化農場の緑と白の看板が見え、ビニールハウスが立ち並んでいる。駐車場に入ると、おしゃれな木造の事務所兼直売ストアが目に入ってきた 1 。直売ストアの木枠の扉は、英国で見たナーセリーの店舗を参考にした、高さ2.5mほどある大きなもので、木材を基調とした店舗は、温かい雰囲気だ。訪問時も、入れ代わり立ち代わりお客さんが訪れ、苗を購入したり、注文したりしていた。ハウスは24棟あり、路地の圃場も合わせると、約4,500坪の広さがある。
文化農場の前身は小野さんの父親が始めた、野菜苗の生産・小売りをおこなう小野農園だった。その頃は、小売りが約8割、農協に出荷するのが約2割だったそうだ。小野さんは、子供のころは植物にあまり興味がなく、農業高校に進学したのも、農園を継がせたい父親の画策によるものだった、と笑いながら話してくれた。卒業後は父親の農園を手伝いながら損保代理店を始め、さまざまな企業と関わる仕事の中で経営的なことを多く学んだという。33歳の時に父親が亡くなり、農園を継ぐことになった。時代の変化に対応しながら、奮闘する日々が始まったが、もともと商いは好きだったので、どうやって売るか、どのような商品をつくるか、情報を集めて分析し、工夫を重ねていった・・・。