日本大学教授・JGN創立メンバー 腰岡 政二
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► 腰岡 政二(こしおか まさじ) 1950年兵庫県生まれ。 薬学博士。農学博士。 大阪大学薬学部を卒業後、大阪大学大学院薬学研究科博士課程を中退し、静岡県立薬科大学助手を経てカナダ国カルガリ大学理学部博士研究員となる。1984年の帰国後、農林水産省農業環境技術研究所、野菜・茶業試験場を経て、2003年に国立の研究機関として設立された花き研究所長になる。2007年に日本大学生物資源科学部教授となり、植物生理活性物質の生理・動態研究に基づいた園芸作物の成長調節に関わる研究を行っている。JGN創立メンバー。 |
温度や光を制御したりジベレリンや矮化剤を使用したりと、さまざまな方法で植物の成長調節が行われているのをご存じですか?実は、私達が手に取る園芸植物の中にもその仕組みを利用したものがたくさんあります。園芸作物の成長調節に関する研究に携わる腰岡政二さんの解説は、芽が出る、花が開く、茎が伸長する、ひとつひとつの事象に真摯に意識を向けるきっかけとなるに違いありません。(事務局)
我々動物とは異なり、植物の多くは、自然環境からエネルギーを取り込んで、生育に必要な有機化合物を自分自身で作り出せる独立栄養生物です。その生育にとって、空気、水、温度、光は必須の要素です。中でも開花に重要な要因である、温度と光について最初にお話します。
植物を取り巻く温度環境は、地球上のどこにあっても、日々、あるいは季節の周期で変動しており、この温度周期に対する植物の反応を、温周性と呼びます。温周性とはどのようなことか挙げてみましょう。
まず、多くの花き植物にとって、毎日の昼間の温度が夜間よりも幾分高い環境の方が、生育に適しているということです。中には昼間よりも夜間温度が高いほうが良い、セントポーリアのような植物も存在しますが。
次に、年間を通じた温度環境と植物との関係から見てみると、花茎の伸長・開花のために、成長期に一定期間、低温に遭遇する必要がある春化植物の存在が挙げられます。ストック 1 やスターチスはよく知られる春化植物です。また、春になると人々の目を楽しませるサクラは、休眠を打破して生育・開花するのに低温遭遇が必要です。逆に、高温遭遇が必要なテッポウユリのような植物もあります。植物はこのような温度変化を、茎頂や腋芽の分裂組織で感応するとされています。
![]() 1 ストックの花 |
もう一つの重要な要因、光について言えば、明期(昼)の長さと暗期(夜)の長さの変化に対する植物の反応を、光周性と呼びます。植物は、葉で暗期の長さに感応して、 開花を調節することが明らかになっています。光周性により、暗期が長くなることで花芽分化する短日植物、短くなることで花芽分化する長日植物、そのどちらにも属さない中性植物などに分類されます。
温周性を利用し、草花の草丈を調節する方法に、昼夜温度差(DIF)法があります。
生育適温の範囲内であれば、草丈の伸長は、昼夜の温度差が大きければ促進し、逆に小さければ抑制されるので、温度管理のみで草丈の伸長を調節できるのです。これは、日々の平均温度には関係しません。ガラス室やビニールハウスなど、温度管理が可能な環境で有効な方法ですから、施設栽培が盛んな欧米で広く利用されています 2 参照。
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