東京農業大学名誉教授・造園伝道師 近藤 三雄
![]() ►近藤 三雄(こんどう みつお) |
想像以上に情報が少ない近代日本の園芸。設立から130年を経た企業「横浜植木」を軸に、明治以降 の園芸シーンを紐解いてくださるのは、造園伝道師・近藤三雄さんです。急激な時代の変遷と共にあった人々の逸話は、新型コロナ禍で描きにくくなった私たちの未来図に差す一筋の光明となるに違いありません。(事務局) |
私は、東京農業大学造園科学科を定年退職後、一念発起して「江戸の園芸」に比べて公表されている情報量の極めて少ない「明治から戦前までの近代園芸」が、明治維新・文明開化・殖産興業・相次ぐ世界大戦など激動の時代の中でどう展開してきたのか、独自の視点でまとめ上げることを企図した。
近代園芸の全体風景を俯瞰でき、効率よく事を進めるためには何を情報源とすれば良いか熟慮した結果、明治22年に欧米の園芸通吉田進による、日本園芸の振興を図るという働きかけに応じた時の元勲が旗を振り、全国の有数な園芸人がこぞって決起して設立された「日本園芸会」の機関誌『日本園芸会雑誌』のバックナンバー全てを通読する以外にないと判断した。紆余曲折を経て某所において内密にその全巻(200冊内外)と対面した時には、思わず感涙した。ページをめくる手は震え、許された時間の中で一心不乱に目を通した。1
![]() 1 横浜植木 大正期の全景図 |
結果、日本の近代園芸は大隈重信らの元勲が主導し、それに呼応した「日本園芸会」と「横浜植木株式会社」が車の両輪となり、内外で開催された「博覧会」を舞台として展開したとする構図を独断した。この路線に沿って関連資料を集め、2017年に平野正裕氏と共著で『絵図と写真でたどる明治の園芸と緑化~秘蔵資料で明かされる現代園芸・緑化のルーツ~(㈱誠文堂新光社刊)』を上梓した。
その後、日本の近代園芸史をさらに深堀りするためには、明治24年、それまで居留外国人の手によって独占的に行われてきた園芸植物等の海外交易事業を日本人の手に奪取するという、横浜の植木屋・鈴木卯兵衛の呼び掛けに応じた22名の有能な士によって設立された横浜植木株式会社の数々の業績をつまびらかにすることが何よりと考え、編んだのが今般刊行した「百花繚乱『横浜植木物語』~花と緑で世界を結んだ先駆者の歩みを追憶~(㈱誠文堂新光社刊)」である。2
![]() 2 2021年7月刊行「百花繚乱『横浜植木物語』~花と緑で世界を結んだ先駆者の歩みを追憶~」(近藤三雄 編著/平野正裕・松山誠・粟野隆 著/㈱誠文堂新光社刊) ►書籍の詳細はこちらから |
横浜植木は、文明開化のまだ明けやまぬ明治の中期から、日本と世界の「花と緑」の架け橋となり、日本植物や日本の伝統的園芸・庭園文化の魅力を世界に発信した。一方、世界中の園芸種苗の最新品種や園芸資材を次々に日本に導入、洋種園芸の礎を築いた。その舞台裏では、まさに逸話と呼ぶにふさわしい数々の血湧き、肉躍るドラマが展開した。本書では、その中でも特出すべきものを64項目選び出し「横浜植木物語」としてまとめ上げた。取り上げた逸話は、これまで公にされることのなかった未知の内容が多く、また単に横浜植木の業績ということにとどまらず、明治の園芸の深淵さ、明治の園芸人の素晴らしさを知る上での貴重な情報ばかりであった。本稿では紙幅の許す限り、その一端を紹介する。3
![]() 3 『百合花撰』の表紙。明治27年以降、英語版も含め36種の彩色石版画の図譜を次々に刊行 |
![]() ►JGN NEWS LETTER 2022年初春号 Vol.15(その1) ►JGN NEWS LETTER 2022年初春号 Vol.15(その2) ►JGN NEWS LETTER 2022年初春号 Vol.15(その3) ►JGN NEWS LETTER 2022年初春号 Vol.15(その4) |
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